【日本の製造業・生産管理の立て直しの課題と改革の方向性】 第九回 工程管理、製造管理、品質管理は生産管理と切り分ける

●工程管理、製造管理は"統制"であって、生産統制という狭義の生産管理領域である

日本に紹介されて生産管理と訳された"Production Controlは、本来"生産統制"と訳すべきでした。昨今導入された"内部統制"は"Internal Control"と訳していて、"内部管理"などという言葉には訳されませんでした。"Control"は"統制"であって、管理いう曖昧な言葉は、言葉が指し示す範囲が曖昧になり混乱を生みます。
Control=統制は、わかり易い言葉でいえば"制御"に該当します。一方、Manageは経営・運営するという概念です。日本語では、どちらも"管理"となりそうですが、意味が違うのです。
私は、資産管理や原価管理にあたる経営に近い業務を生産管理とし、指示-(統制による)実行-実績収集は工程管理、または製造管理と呼ぶようにしています。そうした厳密性は別にして、日本では曖昧に生産管理という言葉が使われるので、生産マネジメントにあたる部分を広義の生産管理と言ったり、工程管理、製造管理を狭義の生産管理と言ったりしています。
ありていに言えば、"生産マネジメント=生産管理"、生産統制=工程管理・製造管理"と再定義したいのです。
今まで、生産管理を生産マネジメントとし、生産統制とは区別して書いてきましたが、今回は生産統制としての工程管理、製造管理の領域を書いていきます。
生産統制で行われる業務機能は、作業指示、出庫指示(含むカンバン)、などの指示と実行、実績管理、製造結果から測定される品質、歩留まり・ロス管理です。また、現場資材管理としての在庫管理なども生産統制で行われる業務機能です。

●作業指示、出庫指示、カンバンなどの作業指示と実績管理

工程管理・製造管理の一つが作業指示、出庫指示(含むカンバン)などの指示業務です。これらの業務は生産計画を受けた小日程計画に基づく作業指示、小日程計画を成り立たせるように現場にモノを出庫させる出庫指示などの"指示"業務です。
指示にもとづいて製造作業や出庫作業、搬送作業などが行われます。実施された結果は、作業実績管理となります。
作業実績としては、実際の投入工数、設備の実稼働時間・非稼働時間、出来高、指示に対する計画の進捗(遅れ・進みすぎ)などが収集されます。また、作業には通常、標準時間が設定されていて、実績と対比して標準差異を可視化し、改善検討に役立てられます。
システムでいえば、作業指示を出すのは製造実行システム(MES : Manufacturing Execution System)を主軸にします。作業指示、出庫指示、計量指示、投入指示などが作られ、実績収集されます。


●現場品質管理、歩留まり・ロス管理

品質管理も工程管理・製造管理の重要な構成要素です。統制・制御の重要な"環"になります。作業実績として現場での品質を可視化し、作業改善や設備改善を通じて、ターゲット通りの品質を達成するための活動です。
実績収集の中に、完成出来高、排除高、仕損・ロス、などの結果を収集します。出来高対排除(この中には再検査して出来高に戻されるものもあります)=直行率、不良を除いた良品率、その反対の不良率、投入に対してロスが出た場合のロス率などを収集し、改善します。
もともと目標(ターゲット)となる値が設定されていて、ターゲットとの差異がある場合に改善活動を開始します。日本の製造現場が得意な、QC7つ道具などと呼ばれる管理図などは、こうした工程管理・製造管理の道具です。
品質管理情報ではありますが、出来高実績や排除実績、不良実績、ロス実績などはMESで収集できます。一部、抜き取りなどによって品質検査をオフラインで行う場合は、品質検査結果をラボ情報システム(LIMS:Laboratory Info. Management System)で収集し、可視化します。
ロス率などは歩留まり情報として分析し、所要量計算を行う際の歩留まり情報としてBOM(:Bill of Material)に格納されます。

●現場資材管理としての在庫管理

工程管理・製造管理としては、現場の資材管理=現品管理としての在庫管理があります。出庫指示にしたがって現品を出庫します。逆に、製造完了後や購買発注にもとづく入庫もあります。入出庫を行って在庫の受け払いを行います。
指示に従わない出庫や入庫予定のない入庫があったり、入出庫のたびに受け払いされず、一括で受け払いしたりする場合は在庫の現品と帳簿・システム管理上の在庫がずれて、問題を起こします。在庫差異を引き起こすのです。
確実な入出庫処理と記録が必須です。在庫管理がまともにできないと所要量計算ができなくなりますし、製造指示と連動した出庫指示がまともにできなくなって製造にも影響を及ぼします。
在庫管理はMESが行う場合もありますが、製造現場とは別に資材倉庫がある場合、資材倉庫の入出庫、保管を担う倉庫システム(WMS: Warehouse Management System)が担う場合もあります。
在庫実績はMRP/ERPに戻しますが、MRPで作成された製造指図、出庫指図、購買発注・入庫予定はMESやWMSに渡され、製造指示、出庫指示となり、実績収集が行われます。

●工程管理・製造管理は人力管理をやめてシステム化すべき

工程管理・製造管理に関わる仕事は、多くの場合、人が紙で行っていることが多いと思います。各指示書も紙、実績収集も紙というケースは本当に多く、指示書を出す仕組みは表計算ソフト、紙で集めた実績を入力する先も表計算ソフトというケースも多く見受けられます。
こうした人力管理は、忙しいと指示や実績収集がいい加減になって、データが不正確になります。その結果、異常値把握ができず、まともな改善活動や工程管理を阻害する原因にもなります。また、製造実績や在庫の受け払いが不正確で、その上週1回や月1回しか入力しないような管理レベルの低さでは、上位の仕組みであるMRPや原価計算システムを使うことができなくなります。
データ収集や補正、間違い探し、転記、入力、変換などに莫大な間接工数を使って、本来は分析・開栓活動に工数を割くべき職長や工場中間管理職が付加価値の高い仕事をすることも妨げます。
工程管理・製造管理における指示、実績収集はシステム化し、仕組み指示データや実績データを受け渡すことができていれば、人間がデータ入力作業やデータ変換・接続作業が無くなり、精度・スピード共にあげていくことができます。結果的にマネジメントサイクルが正確で、速く回せるようになるので効果があります。


今後、少子高齢化で現場作業員も採用が難しくなるでしょう。さらに、職長を担う優秀でまじめに働く人も貴重になります。そうした貴重な人材に、付加価値のないデータ処理をさせたりせず、IoT(:Internet of the Things)基盤や制御盤、設備からPLC(Programable Logic Controller)経由でMESにデータが引き渡されるような製造現場のシステム化は必要な投資になっていくでしょう。
工程管理・製造管理がシステム化されれば、手作業で作っていた生産性・QC関連の資料作成もシステムで見える化できます。また、上位システムであるMRP/原価計算(ERP)との双方向の連携ができるようになります。正確でタイムリーな在庫情報が手に入れば、MRPも確実に回せますし、原価計算のスピーディーに行えます。
生産統制としての質が上がるだけでなく、生産マネジメントの質とサイクルを向上させるためにも、システム機能配置を切り分け、工程管理・製造管理のシステムと生産マネジメント用のシステムを定義し、適切にシステムを選び、導入・接続していくことが必要です。しかし、この辺の仕組化は日本の製造業は弱く、あまりうまくできていません。逆に言うと改善余地が膨大に残っているのです。
いつまでも現場力とかモノ作りとか情緒的な言葉で思考停止して現場に負荷を押し付けず、合理的な統制・マネージの仕組みを作らないと、日本の製造業は世界に取り残されていくでしょう。現場改善も大切ですが、もっと高い視野で生産マネジメントの高度化を目指していくことが喫緊の課題です。

第八回 生産管理と工程管理の分離と生産管理の再構築 はこちら

【ライタープロフィール】

石川 和幸

経営コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、筑波大学大学院経営学修士。能率協会コンサルティング、アンダーセン・コンサルティング(現、アクセンチュア)、日本総合研究所などを経て、サステナビリティ・コンサルティングを設立。専門は、ビジネスモデル構想、SCM構築・導入、ERP構築・導入、アウトソーシング導入、管理指標導入、プロジェクトマネジメントなど。 著書に『図解 SCMのすべてがわかる本』『図解 生産管理のすべてがわかる本』『在庫マネジメントの基本』(以上、日本実業出版社)、『思考のボトルネックを解除しよう!』、『見える化仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『なぜ日本の製造業はもうからないのか』(東洋経済新報社)、『エンジニアが学ぶ物流システムの「知識」と「技術」』(翔泳社)、『アウトソーシングの正しい導入マニュアル』『図解 工場のしくみが面白いほどわかる本』(中経出版)など多数。

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